2020年01月04日
㊻詩篇から⑴ ふぞろいな食器
詩集『魂の領分』(2016/7)より
<ふぞろいな食器>
いつのまにか食器洗いがおれの専門になっていた
洗うのも大量だが、片づけもめんどうだ
うちの食器はそろったものがあまりない、模様も大きさもちがう
回天寿司のように同じ種類を積み上げるわけにはいかない
拭いたものを5,6枚広げてもまだ重なるものがない
狭い台所だから後ろの食器棚に1枚ずつ運びかねない
理由は簡単だ、ほとんどがもらい物だ
こんなのはホームセンターにでも行って買いかえたらいい
そろったやつ、それも一皿でおかず各種が入る大きいやつに
そう、一度連れに言ったことがある
すると、もったいない、捨てられない、思い出が、というわけだ
1枚の皿、1個のお椀、それぞれの来歴を語りだしたら切りがない
ここ10年、いやもっと前からの物語を始める
ふーむ、おれは古物保存会の作業員か
おれも、だれにも役に立たない本だ、ノートだとか溜めこんできた
そんなわけで今夜も、狭いテーブルに皿小鉢をいっぱい並べて
いい年こいた娘、息子と家族だんらんの花を咲かす
長いこと別居してきた同士なので、年期が入った話になる
皿のように重ねてほい、とかたずけるわけにもいかない
そんなあれこれで、食器洗いもまんざらではないのである
okkai335 at 04:55│Comments(0)