(68)近況 私小説第2作出版の決意(70)新刊「金の要らない村から離れて」出版体制確立

2020年05月01日

69)水害時のある決断 藤沢周平『蝉しぐれ』から

  江戸時代にも災害対策の一環として、緊急に土手を切って水路を切り換える必要に直面することもあったらしい。ここで紹介するのは、当初予定した場所に異論を抱いて一人が、至急場所を変更されたいという(要約紹介)。

「ばかをいえそんな暇はない」
「いや、ぜひとも」
「理由を言え」
「ここで土手を切ればざっと10町歩の取入れ前の稲田がつぶれます。・・・」
「しかし間に合わんな」
「いや間に合います・・・鴨の曲がりまでわずか3町(330メートル)ご決断ください」
 
 そして実際はその決断通りに事はなった。その背景には、その最初の決断どうりになればその地域の農民は支援から身を引くだろうということもあった。またたかが330メートルとはいえ様々移動装備を考えれば容易な判断とはいえない。

              *

 ここまで紹介すれば、おそらくある時代小説の熱狂的読者にはすぐ見当がつくだろう。それは、藤沢周平作『蝉しぐれ』からである。私もいつか時間ができたら読んでみたいという念願がかなえられることになった。

 新出版社での初動の準備がある程度でき、あとは現在のウイルス情勢待ちしかない。ここで登場する緊急時の硬骨漢は主人公の親父である、しかもその後その父親は藩政に関わる問題で切腹する・・・

 思うこと多岐に広がるが、さしあたりの重大問題、新型コロナウイルスにも、この小説の問題意識は届く。時折ギョッとする報道の中で、わずか<330メートルの距離>を渋ることで先が見えない惨事を呼び寄せたのではないか、という危惧を。

okkai335 at 02:30│Comments(0)

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